2025年8月の記事一覧
次の学習指導要領に向けた議論が本格化
学習指導要領は10年ごとに作られている。次期学習指導要領をどんな内容にするべきかという今後のスケジュールが既に決まっている。
①令和7年~8年~文科省からの諮問を審議、中間まとめ
②令和8年~中教審から文科省への答申
③令和9年~11年~移行措置の実施
④令和12年~小学校から順次全面実施
現在、新学習指導要領に向けての審議内容のポイントは、
①4つのポイントの継続強化
「社会に開かれた教育課程の実現」「三つの柱等の資質・能力の育成」「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改革」「カリキュラム・マネジメントの推進」
②教科の再編、内容の精選、重点化
・・・しかし、学校現場の実感はいわゆるカリキュラム・オーバーロードであり、子供たちは余裕のない学校生活を送り、学校に魅力を感じなくなっている。いじめや不登校は増加の一方であり、教員の病気休暇等も増加し教職希望も減少の一方である。その一因に現在までの学習指導要領の在り方がある。
③探求的な学習・体験的な学習の重視
実社会・実生活の諸課題から問題を見出し、各教科で身に付けた知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体的に学習に取り組む態度、見方・考え方などを活用したり発揮したりして、探求的な学習を子供自ら推進する学びはこれからの子ども達に身に付けさせたい資質・能力の育成に欠かせない。
④「特別活動」の重視
話し合いによって問題解決する力の育成が今こそ重要である。
⑤生き方、哲学の教育の重視
翻って我が国の子どもを見ていると知識は持っているもののその子なりの生き方や哲学を感じることが薄い。
⑥教師の研修環境の向上
望ましい学習指導要領が改訂されても、これを実現する教師に力量が伴わなければ元も子もない。
中教審の答申を待って、「そうなんだ」と他人事にするのではなく、各校で自分事に「文科省からこういう諮問が出たが、本校の実践を鑑みたとき、どんな答えを出したらよいだろうか。」と、教員みんなで考える必要があります。
ひと学級の人数
ひと学級の児童の上限を35人とする「35人学級」が、令和7年4月、全国の小学校の全学年にようやく行き渡りました。
平成23年に小学校1年生のみが35人となりますが、他の学年はそのままでした。小人数学級の導入は教育界の長年の悲願でした。コロナ禍の「3密」回避が大きな要因でした。
中学校では40数年前の基準「上限40人」のままの状態が続いています。
『生きる力』とは?
「生きる力」とは、現行の学習指導要領で重視されている中心的な考え方で、以下の3つの資質・能力から成り立っています。
〇知(知識・技能)
社会の変化に応じて必要となる基礎的な知識や技能を身につけ、自分で課題を見つけ、自ら学び、考え、主体的に判断し、行動し、問題を解決できる力。
〇徳(豊かな人間性)
他人を思いやる心や感動する心、自律性、協調性、他者とのコミュニケーション能力など、豊かな人間性と社会性。
〇体(健康・体力)
健康でたくましく生きるための体力や生活習慣、心の健康。
また、「生きる力」は次のような能力も含みます。
☆論理的に考えたり自分の意見を表現する力
☆対話的・協働的に学ぶ力
☆自己理解や自己管理、目標設定、問題解決、意思決定、計画実行などのライフスキル
☆他者の立場や多様な価値観を理解し、共生する姿勢
☆困難に対してしなやかに立ち向かうレジリエンスや、社会とよりよく関わろうとする意欲
要するに、「生きる力」とは知・徳・体のバランスの取れた全人的な力であり、変化の激しい現代社会をたくましく生き抜くための総合的な資質・能力です。
ただ、☆の2番目の対話的・協働的に学ぶ力ですが、支笏湖小学校のように各学級2人~3人という小規模校では、【いつも同じ人との対話・・・】ということになってしまいます。これが、小規模校の悩みの種なのです。
現行の「学習指導要領」が育てたいと考えている“子ども像”とは?
〇「生きる力」を持った子ども
これは、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性」という三つの柱をバランスよく備え、社会や人生で主体的に学び、課題を解決したり自己実現できる力を指します。
〇自立し、他者と協働できる人間
「自立する人間」「他者とかかわる人間」「自己を成長させる人間」といったキーワードで、主体的に考え、対話や協働を重視し、変化や未知の状況にも柔軟に対応できる子どもが目指されています。
〇変化の激しい社会を生き抜き、価値を創造する人材
決まった正解を出すだけでなく、問いを立て、他者と考え、自分なりの答えを見いだせる力や、多様性を尊重し互いを認め合う姿勢が重要視されています。
まとめると、現行指導要領は「自ら課題を見つけ、学び続け、他者と協働しながら、たくましく未来社会を切り拓く子ども」を育てることをめざしています。
⇒知識の暗記を重視してきた時代とは、隔世の感があります。「昔は云々だった・・・」のではなく、その時代時代に求められていた“子ども像”が異なっていたのです。
「学習指導要領」って何ですか?
学習指導要領とは、文部科学省が定める、小・中・高校で教える内容や教科の目標となる教育課程(カリキュラム)の基準のこと。
全国どこでも一定の教育水準が保てるように設けられており、およそ10年ごとに時代の変化や子どもたちの状況に合わせて改訂されています。
各学校はこの基準に沿って自分たちの教育課程を作ります。ただし、学習指導要領は最低限の基準であって、各学校や先生は子どもたちの興味や実態に合わせて工夫しながら教育活動を行うことが期待されています。
教科書もこの学習指導要領を基に作られています。
【10年ごとの学習指導要領を振り返ってみましょう】
〇昭和43年~「調和と統一のある教育課程」
〇昭和52年~「ゆとりのあるしかも充実した学校生活、個性や能力に応じた学校生活、個性や能力に応じた教育、個性を生かす教育」
〇平成元年~「自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応できる能力の育成、個性を生かす教育、国際理解・文化と伝統の尊重」
〇平成10年~「生きる力の育成」「自ら学び、自ら考える力の育成、ゆとりのある教育活動、個性を生かす教育、特色ある教育・特色ある学校づくり」
〇平成20年~「生きる力の育成、知識技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランス」
〇平成29年~「社会に開かれた教育課程、育成を目指す資質・能力の明確化、『主体的・対話的で深い学び』の実現、カリキュラム・マネジメントの推進」
特徴的なのは、昭和52年から「個性」という言葉がずっと使われ始めたこと。また、平成10年から現在に至るまでずっと「生きる力」が使われています。裏を返せば「個性」を重んじられてこなかった時代背景の反省から必要視されたということであり、グローバル社会になった今、まだまだ「生きる力」は定着していないということが見えてきます。
因みに、いまだに言われているいわゆる「ゆとり世代」とは、平成10年から約10年間の間に義務教育を受けていた世代を言います。