生活の様子

8/11 エゾシカについて学習してみる②

 

⑤エゾシカの性格

 エゾシカは、一般的な草食動物と同じく、臆病な性格を持った個体が多い傾向にあります。基本的に人を襲うような事はないため、北海道でエゾシカに遭遇しても、刺激しなければそれほど危険はないでしょう。しかし、繁殖期の雄や子育て中の雌は、時に攻撃的になることがあり、北海道では稀にエゾシカによる人的被害も報告されています。臆病な性格のため、群れで行動する習性がありますが、群れは雌雄別に構成されています。雄の群れ、雌の群れがそれぞれにあり、角の有無などによって見分けることが可能です。繁殖期には縄張りのなかの雌の群れに、雄が合流しハレムを作り、一夫多妻の状態で繁殖を行うと言われています。

 

⑥農作物への被害

 エゾシカの主要な被害として挙げられるのが、農作物や林業への問題です。エゾシカの食害による被害の約半数が牧草被害と報告されており、牛や豚の餌となる牧草がエゾシカによって食べられてしまうと、乳量減少や餌代が余計にかかってしまいます。その他、北海道の特産品でもあるトウモロコシ、テンサイ、コムギ、ジャガイモ(バレイショ)などの農作物も、エゾシカによって食害を受けているのが現状です。エゾシカによる農林業の被害額は年々増え、2011年に64億円を超える大きな被害額が問題になっています。

 

⑦希少植物や自生植物・環境への被害

 北海道は、固有種とされる自生植物が多いことでも知られています。しかし、これらの希少植物もエゾシカによる食害や踏みつけにより、植生破壊の被害を受けています。特に、シレトコスミレやユウバリソウ、ハマナス、エゾカンゾウなど、北海道を代表する希少な高山植物の食害は問題視されており、対策が求められています。放置してしまうと、北海道の固有種が絶滅してしまう危険性もあるでしょう。希少な植物以外にも、エゾシカが幼樹を食べてしまうことで森林が減少し、土砂や落石が置きやすくなっている地域も存在しています。一方で、エゾシカが好まない植物ばかりが数を増やしていくなど、北海道の本来の自然環境のバランスが崩れていることも大きな被害のひとつです。

 

⑧交通事故による被害

 エゾシカによる被害で次に問題とされているのが、交通事故です。エゾシカの交通事故による被害は、何も車だけではありません。列車とエゾシカの接触事故も多く報告されています。エゾシカによる列車事故は、年間2,800件以上も起きています。また、自動車による交通事故は年間2,000件以上起きており、令和2年度では過去最高の3,500件以上に登りました。エゾシカが原因の交通事故のうち、約42%は10月から11月にかけて発生しており、越冬前のエゾシカの移動が原因だと考えられています。時間帯では約70%以上が16時から24時にかけてが一番多く、北海道ではドライバーに以下の予防策を呼びかけている地域もあります。

〇秋〜初冬の運転に注意する

〇早朝・夜間の運転に注意する

〇ライトの反射に注意する

〇一頭だけだと思わない

 長く暮らす北海道民であれば、これらの予防策を知っている人も多いですが、他府県から旅行などで北海道を訪れている人がレンタカーなどで事故を起こすケースも多く報告されています。

 

⑨ 感染症による被害

 エゾシカに限らず野生の動物は、人間に感染する病原菌を持っている可能性があります。そのため、エゾシカに遭遇しても決して近づいたり触ったりしないようにしてください。特に、エゾシカには6種類のマダニが寄生していることが多く、マダニを媒介した感染症への注意が必要です。マダニを媒介する感染症には、ライム病やダニ媒介性脳炎などがあります。ダニ媒介性脳炎においては、世界的に新規感染者数が増加傾向にあるため、特に注意が必要です。

 

⑩人への攻撃による被害

 基本的に臆病で大人しい性格のエゾシカですが、発情期の雄や子育て中の雌は攻撃性を持つことがあります。雄の持つ大きな角による攻撃のほか、巨体による踏みつけで人的な被害が出るケースも報告されています。特に多いのが、人間が小鹿に近付いて母鹿から攻撃を受けるケースです。エゾシカの出産時期である6月から7月にかけては、弱って動けない子ジカを見ることもあります。そのような場合は、必ず親ジカが近くで見守っています。人間がむやみに近づくと攻撃される危険性があるので、注意しましょう。